湘南移住、なぜ数年で帰る人がいるのか。海の近くの生活は「合う人」と「合わない人」がかなり分かれる

住みやすさ・評価

✍️ この記事を書いた人

なお|茅ヶ崎在住20年以上・投資歴30年の個人投資家。湘南エリアの不動産・暮らしを当事者目線で書いています。移住相談を受けることも増えてきたので、そこで感じたことも含めて書きます。

湘南移住って、外から見るとかなり魅力的に映る。海が近い。空が広い。東京からギリギリ通える距離感。休日になんとなく自転車を走らせているだけで「ああ、これだ」みたいな感覚が確かにある。

コロナ以降、「東京を離れて湘南へ」という動きはそれなりに増えた。実際、近隣の物件相場もここ数年でじわじわ上がっている。

ただ。

移住して数年で東京に戻る人も、普通にいる。

これは別に「移住に失敗した」という話ではなくて、湘南という場所そのものが、相性をかなり選ぶ土地なんだと思う。20年以上ここに住んで、移住相談を受けたり、逆に戻っていく人を見てきた感覚から言うと、合う人と合わない人の差がはっきりしすぎるんです。


最初の1年は、たいてい楽しい

これはほぼ全員そう。

朝起きて海の方角に空が広がっているだけで、東京にいた頃とは体感が違う。夕方の江ノ島周辺の光の変わり方とか、茅ヶ崎の砂浜で夕陽を見ながらぼーっとしているときの感覚とか、それは本物だし「来てよかった」と思う瞬間は実際にある。

特に、東京の情報密度に疲弊していた人ほど、最初の1年は「回復している」感じがする。情報が減る、通知が減る、人の密度が下がる。それだけで精神的にはかなり違う。

ただ、生活って、数ヶ月経つと「非日常」が「日常」に変わる。海も見慣れる。空の広さにも慣れる。そうすると今度は、暮らし自体が見え始める。それが移住のリアルで、ここで合う・合わないが分かれてくる。


思ったより不便、というのは割と共通した感想

湘南って、観光で来るとコンパクトに見える。藤沢・辻堂・茅ヶ崎と駅が並んでいて、海もそこそこ近くて、カフェや飲食店もそれなりにある。だから「東京より不便になるイメージが薄い」まま来る人がいる。

でも実際に住むと、車移動前提の場面がかなり多い。特に内陸寄りのエリアに住んだ場合、日常の買い物ですら「駅まで自転車で20分」みたいな状況になることがある。雨の日は普通に面倒くさい。

⚠️ 夏の134号線問題
夏になると、海沿いの国道134号がかなり混む。湘南海岸公園前〜茅ヶ崎あたりは、週末の日中は動かなくなる時間帯もある。「海の近くに住みたい」と思って来たのに、夏の時期は海沿いを迂回するようになった、という人がいる。これはわりと湘南あるあるで、知らずに来ると少し面食らう。


「ゆるい暮らし」は、基盤が安定していて初めて成立する

ここはかなり重要だと思っていて、正直に書く。

湘南移住って、SNSで見ると穏やかに見える。海辺を散歩して、カフェでリモートワークして、子どもが自然の中で育つ。そういうビジュアルはたくさん流れてくる。でも実際には、生活コストは都内と比べてそこまで劇的に下がるわけではない。

物件は近年また上がっている(特に海近・駅近)。車を持つ家庭は維持費がかかる。築年数が経った海近物件は、潮風の影響でメンテナンスコストが地味に重い。

だから、収入が不安定な状態で「生活コストを下げながらゆっくり暮らしたい」という発想で来ると、数年で「海どころじゃない」という状況になりやすい。東京時代より通勤時間が増えた人もいるし、リモートワーク前提で移住したのに出社回帰でズレた、というケースも実際にあった。

❌ こういうパターンが多い
① リモートワーク継続を前提に移住 → 1〜2年後に出社回帰の流れで通勤時間が爆増
② 「湘南は家賃が安い」という認識で来る → 実態はそれほどでもない、車費もかかる
③ フリーランス初期に移住 → 収入が安定する前に生活コストの重さが顕在化


「孤独に近い感覚」が合わない人もいる

これはあまり語られないけれど、けっこうある気がする。

湘南は、東京ほど人間関係が希薄ではない。地域コミュニティも生きているし、サーフィンや子育てを通じた繋がりもある。それが居心地いい人には最高の環境だと思う。

ただ、移住してきた最初の時期は、友人がほぼゼロから始まる。都内なら匿名性の中でそれなりに暮らせるけれど、湘南は良くも悪くも「生活が見える」感じがある。地域に溶け込んでいけるタイプの人には問題ないが、そうでないと、海の近くにいるのに妙な孤立感を感じることがある。

海が好き、という感覚と、湘南の土地に馴染めるかどうか、は別問題なんだと思う。


「理想の湘南」と「実際の湘南」の間にある距離

多くの人がイメージしている湘南って、たぶん「晴れた日の湘南」なんですよね。青空、海、サーファー、カフェ、子どもが砂浜で遊んでいる光景。

でも実際の湘南は、冬はそれなりに寒いし、雨も多い。湿気は高い。潮風で車や家の金属部分が錆びる。夏の観光シーズンは人が増えて騒がしくなる。134号沿いは渋滞する。

毎日が映画みたいな生活ではない。

ほとんどの時間は、普通の日常だ。スーパーに行って、子どもを迎えに行って、ゴミを出して、請求書を払う。その「普通の日常」を湘南でやることが自分に合っているかどうか、そこが本質だと思う。景色が良くても、日常のルーティンが合わなければ、数年で「やっぱり東京のほうが自分には合っていた」となる。


それでも、合う人には本当に合う場所だとも思う

✅ こういう人は長く続く
・便利さより「空気感」を優先できる人
・車移動や多少の不便を受け入れられる人
・地域コミュニティに積極的に入れる、または一人でも平気な人
・収入の基盤が安定しているか、見通しが立っている人
・「湘南ライフスタイル」に憧れるより、自分のペースで暮らしたい人

不思議なのは、合う人には本当に合う、ということ。効率とか利便性を多少失っても、この空気の中にいたい、という人が実際にいる。夕方に海を見ながら帰れることとか、空が広いこととか、季節の変化を体で感じやすいこととか。数字にならない部分を重視できる人にとって、湘南は代わりになる場所がなかなかない。

移住って、住居の変更というより、価値観の調整に近いのかもしれない。湘南は、その答えがわりとはっきり出る場所だと思う。


🧭 なおの視点

移住相談を受けていて、最近感じることがある。「湘南に移住したい」という人の半数以上は、湘南の暮らしそのものに憧れているというより、「今いる場所から抜け出したい」という気持ちが先に来ている気がする。

それ自体は悪いことじゃない。環境を変えることで気持ちが切り替わる人もいる。ただ、「今の場所での問題」が湘南に来ると解決するかというと、そうじゃないことも多い。収入の問題は収入の問題だし、人間関係の疲弊は場所を変えても消えにくい。

今後、リモートワーク縮小の流れがさらに進むとしたら、湘南×フルリモート前提の移住はやや難易度が上がるかもしれない。そういう意味では、これから検討する人は「出社回帰になっても成立するか」を真剣に計算しておくほうがいいと思う。不動産の資産性は悪くないエリアだけど、「居住継続できるか」の問題は別の話なので。


※本記事は茅ヶ崎在住の個人投資家による主観的な考察・体験談を含みます。移住判断に際しては、ご自身の生活環境・収入状況・就労条件を十分に検討した上で、実際に現地を複数回訪問されることをお勧めします。物件情報・家賃相場等は市況により変動します(2026年5月時点の認識にもとづく)。

📎 参考リンク

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