「湘南に住むなら、どこがいいですか」と聞かれたとき、候補として真っ先に名前を挙げることが多いのが辻堂です。理由は海が近いからだけではありません。駅を出ればテラスモール湘南があり、東京にも横浜にも電車一本で出られて、少し自転車を走らせれば海がある。この3つがそろっている街は、湘南でも意外と少ないのです。
20年以上湘南に住んでいるあいだに、辻堂はずいぶん変わりました。特に北口は、昔を知っている人ほど「こんな街だったっけ」と感じるはずです。一方で、駅から少し離れると昔ながらの住宅街も残っている。新しく整った街と、昔からの湘南の住宅地が混ざっているのが、いまの辻堂です。
この記事では、家賃・通勤・買い物・子育て・治安・海との距離、そして北口と南口の違いまで、近くで暮らしてきた目線で整理します。
辻堂はどんな街か|駅前の便利さと、海側の住宅地
辻堂駅は藤沢市の西の端、茅ヶ崎市との境に近い場所にあります。JR東海道線の駅で、湘南新宿ラインと上野東京ラインも停まるので、横浜・品川・東京にも、渋谷・新宿にも乗り換えなしで出られます。
藤沢駅のような大きな繁華街はありません。その代わり、北口には駅とデッキでつながったテラスモール湘南があり、買い物・食事・映画まで駅前で済みます。南口に出て海の方へ向かうと雰囲気はがらりと変わり、昔からの住宅街の先に辻堂海浜公園と海が広がります。駅前の便利さと、海側の落ち着いた住宅地。辻堂には、この2つの顔があります。
辻堂を変えたテラスモール湘南
辻堂を語るなら、2011年に開業したテラスモール湘南は外せません。約280店舗が入る湘南最大級のモールで、スーパー、飲食店、映画館、衣料品、生活用品まで、たいていのものがここでそろいます。雨の日でも駅からそのまま入れるのは、住んでみるとかなり助かる点です。
仕事帰りに食料品を買う、休日に映画を見る、子どもと出かける。こうしたことの多くが、車を出さずに駅前で終わります。「湘南は車がないと不便」と思われがちですが、辻堂駅の周辺に限っては、徒歩と自転車でも十分に暮らせます。
ただ、テラスモールができる前と後では、北口はほとんど別の街です。便利になったぶん、週末は駅周辺も道路も混みます。「駅前が便利」と「人が集まる」はセットで考えておいた方がいいと思います。
辻堂の家賃相場|「藤沢より安い街」ではなくなりつつある
以前は「藤沢から少し離れるぶん辻堂の方が安い」という感覚がありました。いまもその傾向はありますが、再開発で人気が上がったこともあり、駅に近くて築年数の浅い物件はそれなりの家賃になります。
| エリア | 1K・1DK | 1LDK | 2LDK | 3LDK |
|---|---|---|---|---|
| 辻堂 | 7.5〜9万円 | 10〜13万円 | 13〜17万円 | 17〜22万円 |
| 藤沢 | 8.5〜10.5万円 | 12〜16万円 | 15〜20万円 | 19〜26万円 |
| 茅ヶ崎 | 6.5〜8.5万円 | 9〜12万円 | 12〜16万円 | 15〜20万円 |
※SUUMO・LIFULL HOME’Sの募集物件をもとにした2026年1月時点の目安(駅徒歩10分圏・築15年以内)。当サイトの湘南の家賃相場記事と同じ基準です。成約家賃ではありません。
表のとおり、辻堂は藤沢と茅ヶ崎のちょうど間くらいの水準です。藤沢よりは1〜2万円安く、茅ヶ崎よりは1万円前後高い。「藤沢の便利さは欲しいけれど、家賃は少し抑えたい」という人が辻堂に落ち着く、という流れは周りでもよく見かけます。
条件を少し広げれば、選択肢は増えます。駅徒歩10分以内にこだわらず自転車圏まで広げる、築年数の条件をゆるめる、隣の茅ヶ崎駅周辺とも同じ条件で比べてみる。車を持つなら駐車場代も忘れずに見ておきたいところです。平均の家賃だけを見るより、自分に必要な間取りと駅からの距離を先に決めて比べた方が、実際の予算感がつかみやすくなります。
北口と南口で、暮らし方はかなり違う
北口|テラスモールと再開発エリア
テラスモール湘南があるのは北口側です。駅周辺は再開発で整備され、比較的新しいマンションや住宅が増えました。買い物の便利さを優先するなら、北口側はとても使いやすいエリアです。一方で、休日はモールに向かう人と車で周辺道路が混みます。「静かな湘南」をイメージして選ぶと、駅前の人の多さに少し驚くかもしれません。
南口|住宅街から海へ続く辻堂
南口は駅前から住宅街が広がり、その先に辻堂海浜公園と海があります。北口の新しい街並みと比べると、昔からの湘南の住宅地という空気が残っています。海まで歩くと少し距離がありますが、自転車ならぐっと近く感じます。「海の近くに住みたいけれど、江ノ島のような観光地の真ん中は避けたい」という人には、この距離感が合うことが多いと思います。
東京・横浜への通勤|乗り換えなしは強いが、朝は混む
東京駅までは東海道線の普通列車で約55分。平日の朝夕には全席指定の特急「湘南」も辻堂に停まり、たとえば朝の特急湘南2号は辻堂6:34発で東京7:18着、44分で座って行けます。特急券は別にかかりますが、「疲れた日の帰りだけ使う」という人は周りにも多いです。
注意したいのは朝の混雑です。辻堂は始発駅ではないので、上りの普通列車は座れないと思っておいた方がいいでしょう。路線検索で「東京まで約1時間」と出ても、それを毎朝混んだ車内で過ごすとなると体感はかなり違います。週1〜2日の出社なのか、週5日なのかで評価は大きく変わるので、毎日都内に通う予定なら、一度平日の朝に実際の電車に乗ってみることをおすすめします。横浜勤務なら、ずっと考えやすくなります。
藤沢駅ならJRに加えて小田急江ノ島線と江ノ電が使えますが、辻堂駅にはJRしかありません。東海道線が止まったときに、ほかの路線へ逃げられないのは覚えておきたい弱点です。「藤沢が隣だから大丈夫」と考えるより、辻堂駅そのものは1路線だと理解したうえで選んだ方がいいと思います。
通勤時間の比較は湘南から東京への通勤時間・ルート比較にまとめています。
子育て世帯から見た辻堂
辻堂は子どもと暮らす場所として選ばれることが多いエリアです。駅前で買い物ができて、住宅街があり、少し移動すれば広い公園と海がある。その象徴が県立辻堂海浜公園で、約20ヘクタールの園内に芝生広場、交通公園と交通展示館、夏のジャンボプールなどがあります。こういう場所が特別なお出かけ先ではなく、自転車で行ける距離にあるのは湘南らしいところです。
保育園は、物件探しと同時に確認する
ただし「子育てに人気の街だから保育園も入りやすい」とは限りません。藤沢市の発表では、2026年4月1日時点の待機児童(国基準)は7人まで減っています。一方で、申し込んだものの希望の園に入れなかった「入所保留」の子どもは440人いました。数字の上では待機児童がほぼゼロでも、近くの園に入れるとは限らない、ということです。未就学のお子さんがいる家庭は、家を決めてから調べるのではなく、物件探しと同時に通える園を確認しておくと安心です。
子育て環境の比較は茅ヶ崎・藤沢・辻堂の子育て環境比較でも整理しています。
治安|駅前は落ち着いているが、夜道は自分の目で
辻堂駅の周辺には、藤沢駅のような大きな繁華街はありません。そのため駅前の印象は比較的落ち着いています。ただ「辻堂だから安全」と一括りにするのも違います。駅近の明るい道と、駅から離れた住宅街とでは、夜の人通りがまったく変わります。自転車を使う人が多い地域なので、駐輪場所と施錠にも気を配りたいところです。物件を決める前に、一度夜の時間帯に駅から候補の物件まで歩いてみる。治安の統計を見るより、こちらの方がずっと実際の暮らしを想像しやすいと思います。
海が近い暮らしは、いいことばかりではない
辻堂の魅力のひとつは、やはり海です。駅を降りてすぐ海、という街ではありませんが、自転車なら日常的に行ける距離にあります。私はこの「近すぎない距離」が辻堂らしさだと思っています。
ただし海側に住むなら、塩害・強風・湿気は覚悟しておいた方がいいです。自転車、車、物干し金具、エアコンの室外機。海に近い場所では、こうしたものの傷み方が内陸とは違います。湘南に長く住んでいると当たり前のことですが、初めて移住する人には意外と見落とされがちな部分です。あわせて、津波や洪水のハザードマップも物件ごとに確認しておいてください。同じ辻堂でも、駅周辺と海側とでは立地の条件が違います。
藤沢市のハザードマップは藤沢市ハザードマップ・避難所一覧、塩害については海沿い賃貸の塩害の記事で詳しく書いています。
辻堂が合う人、合わないかもしれない人
| 合いやすい人 | 合わないかもしれない人 |
|---|---|
| 駅前の便利さと湘南らしさを両方ほしい | 複数路線が使える駅を最優先したい |
| 海まで自転車で行ける距離に住みたい | とにかく家賃の安さを最優先したい |
| 横浜・東京方面へJRで通う | 駅を降りてすぐ海、という環境を想像している |
| 子どもと公園や海で過ごしたい | 休日の駅前や道路の混雑が苦手 |
20年見てきた辻堂の変化
私が湘南に住み始めたころ、辻堂はいまほど「住みたい街」として名前が挙がる場所ではなかったと思います。それがテラスモール湘南の開業と駅周辺の整備で、一気に変わりました。便利になり、人が増え、住宅も増えた。当然、家賃や住宅価格を見る目も変わります。
それでも、駅から少し自転車を走らせれば海があり、昔からの住宅街があります。すべてが新しい街になったわけではありません。この少しちぐはぐな感じが、辻堂の面白いところだと思っています。
なおのひとこと
辻堂を見に来るなら、北口のテラスモールだけで帰らないでください。南口に出て、自転車か徒歩で海の方へ進んでみると、駅前とはまったく違う辻堂が見えてきます。駅前だけの辻堂と、住宅街まで入った辻堂。その両方を見てから「ここで毎日暮らせるか」を考えるくらいが、湘南の街選びにはちょうどいいと思っています。
辻堂が「遊びに行く湘南」ではなく「暮らす湘南」と言われる理由は、辻堂は「暮らす湘南」なのかもしれないにも書いています。
あわせて読みたい
- 藤沢市「令和8年4月1日時点の待機児童数について」(PDF)
- 神奈川県「辻堂海浜公園」
- ウォーカープラス「テラスモール湘南」(2026年6月時点の掲載情報)
- JR東日本 時刻表「特急湘南2号(平塚→東京)」
- SUUMO 神奈川県の賃貸物件/LIFULL HOME’S 神奈川県の賃貸(家賃は2026年1月時点の募集情報をもとにした目安)
※交通・保育施設・店舗等の情報は掲載時点のものです。家賃や保育施設の受け入れ状況は時期・条件によって変わります。

