「湘南に住みたい」と考えたとき、最初に藤沢を候補にする人はかなり多いと思います。理由はわかりやすくて、東京・横浜へ電車一本で出られ、駅前には百貨店や商業施設があり、少し自転車を走らせれば鵠沼や江の島の海がある。行政、病院、学校、買い物も市内でほぼ完結します。湘南らしさと普通の生活、その両方をとりやすい街です。
ただ、湘南に長く住んでいると、「藤沢は住みやすい」の一言で片づけるのは少し雑だとも感じます。藤沢駅と湘南台はほとんど別の街ですし、辻堂と鵠沼でも暮らし方は違います。実際、同じ藤沢市の中でも、ファミリー向けの家賃相場には駅によって月9万円もの差があります。
この記事では、藤沢市内のエリアごとの違いを中心に、家賃・治安・子育て・通勤・災害リスクまで、数字と暮らしの実感の両方で整理します。
藤沢はどんな街か|「海の街」だけではない
藤沢と聞くと、江の島や湘南海岸を思い浮かべる人が多いかもしれません。でも実際の藤沢市はかなり広く、人口は約44万5千人(2026年8月1日時点)。南側には鵠沼・片瀬・江の島といった海沿いのエリア、真ん中に藤沢駅、北側には湘南台・六会・長後などの住宅地が広がります。人口は前年同月より327人増えていて、首都圏の郊外としては人が減っていない街です。
同じ市内なのに、場所によって景色も生活スタイルもかなり違います。藤沢駅で用事を済ませる日と、湘南台へ行く日とでは、「同じ市に来た」という感じがあまりしません。これが藤沢を選ぶときの面白さであり、少し難しいところでもあります。
家賃|同じ藤沢市でも、2LDKで月9万円の差
藤沢市の家賃は湘南の中では高めです。ただ、「藤沢市の家賃相場」という一つの数字だけを見るのはおすすめしません。SUUMOが公開している駅ごとの相場を並べると、差の大きさがよくわかります。
| 駅 | エリアの性格 | 1LDK/2K/2DK | 2LDK/3K/3DK |
|---|---|---|---|
| 片瀬江ノ島 | 海沿い・観光地 | 11.7万円 | 16.6万円 |
| 鵠沼海岸 | 海沿いの住宅地 | 10.4万円 | 12.5万円 |
| 藤沢 | 市の中心・3社乗り入れ | 10.6万円 | 12.1万円 |
| 辻堂 | 再開発・テラスモール | ― | 10.5万円 |
| 湘南台 | 内陸・3路線 | 8.7万円 | 9.8万円 |
| 六会日大前 | 市北部の住宅地 | 8.0万円 | 8.5万円 |
| 善行 | 藤沢の隣・住宅地 | 6.8万円 | 7.6万円 |
※SUUMO「小田急江ノ島線」「JR東海道本線」の駅別家賃相場(建物種別マンション、2026年10月10日更新)。辻堂の1LDK/2K/2DKは今回確認していないため空欄。SUUMO独自の集計による相場で、掲載物件の平均とは異なる場合があります。
いちばん高い片瀬江ノ島と、いちばん安い善行とでは、2LDKで月9万円違います。年間にすると100万円を超える差です。しかも善行は藤沢駅から小田急で1駅。駅前の便利さから少し離れるだけで、これだけ相場が変わります。
家賃を抑えたいなら、藤沢駅だけでなく善行・六会・湘南台まで見ること、駅徒歩10分以内にこだわらないこと、海沿いだけで探さないこと。この3つで選択肢はかなり広がります。ネットで「藤沢 家賃相場」と検索すれば平均値はすぐ出てきますが、実際の部屋探しでは、平均値より「毎日使う駅からどこまで離れられるか」の方が大事です。
湘南のほかの市との比較は湘南の家賃相場【2026年版】にまとめています。
エリア別に見る藤沢の暮らし
藤沢駅周辺|交通と買い物を優先する人向け
藤沢駅はJR東海道線、小田急江ノ島線、江ノ電の3社が乗り入れる湘南のターミナル駅です。東京・横浜方面への通勤だけでなく、江の島・鎌倉方面に出るのも便利です。駅の周りには商業施設、スーパー、飲食店、銀行、病院、行政の窓口が集まっていて、車がなくても生活しやすいのは大きな強みです。
一方で、駅前なので当然人は多い。南口・北口とも飲食店が多く、夜になると昼間とは少し雰囲気が変わる場所もあります。「湘南だから静かな海辺」というイメージだけで藤沢駅前を見ると、思っていたより普通の都市だなと感じるかもしれません。
辻堂|この20年で大きく変わった街
個人的に、湘南でいちばん変わった場所のひとつが辻堂だと思っています。昔の北口を知っている人なら、いまの景色に驚くはずです。テラスモール湘南ができ、周りにはマンションや住宅が増え、駅前だけ見ると「新しい湘南」という言葉がよく似合います。海までは少し距離がありますが、自転車なら十分生活圏です。駅前の便利さと住宅街の落ち着きを両方求めるファミリーには検討しやすい場所ですが、人気が上がったぶん「辻堂だから安い」という時代ではなくなりました。
辻堂については辻堂の住みやすさで詳しく書いています。
湘南台|海より交通と家賃のバランスをとる場所
湘南台は、一般にイメージされる湘南とは少し違います。海は遠い。その代わり、小田急江ノ島線・相鉄いずみ野線・横浜市営地下鉄ブルーラインの3路線が使え、横浜方面への移動はかなり便利です。駅周辺にスーパーや飲食店もあり、日常生活で困ることはまずありません。家賃は藤沢駅より2LDKで2万円ほど低く、「湘南に住みたい」というより「藤沢市内で交通と家賃のバランスをとりたい」人に向いたエリアです。
湘南台については湘南台の住みやすさで整理しています。
鵠沼・片瀬|いわゆる「湘南らしい暮らし」
海の近くで暮らしたいなら、鵠沼や片瀬はやはり魅力があります。朝に海へ行く、自転車で江の島まで走る、夕方に海沿いを散歩する。これが観光ではなく、本当に日常になります。ただし、海が近い暮らしには別の側面もあります。潮風、砂、湿気、強風。自転車や車、エアコンの室外機は内陸より傷みやすく、夏は観光客で道路も混みます。湘南に長く住んでいると当たり前のことですが、初めて海沿いへ移住する人には意外と見落とされがちな部分です。
鵠沼については鵠沼の住みやすさ、塩害は海沿い賃貸の塩害の記事もどうぞ。
治安|「良い・悪い」の二択では語れない
藤沢の治安も、「良い」「悪い」の二択では説明しにくいです。藤沢駅の周辺には繁華街があり、江の島や海岸の周辺は夏になると人の流れが大きく変わります。一方で、駅から少し離れれば静かな住宅街もたくさんあります。これを全部まとめて「藤沢は治安がいい」「悪い」と言ってしまうと、実際の街とはずれてしまいます。
物件を探すなら、犯罪件数を見るより、候補の物件から駅まで、実際の帰宅時間に歩いてみることをおすすめします。街灯はあるか、人通りはあるか、途中にどんな店があるか。昼の内見ではわからない部分です。
湘南全体の治安は湘南の治安は本当に良い?で比べています。
子育て|待機児童は7人。ただし「入れなかった子」は440人
藤沢市が発表した2026年4月1日時点の資料では、国の基準による待機児童は7人まで減っています。前年の17人から10人減り、保育の定員も198人増えました。数字だけ見ると、保育園はかなり入りやすくなった印象です。
ただ、同じ資料には、申し込んだのに希望の園に入れなかった「入所保留」の子どもが440人いたことも書かれています。待機児童の数え方では、ほかの園を紹介されて辞退した場合などはカウントされないため、「待機児童ほぼゼロ」と「近くの園にすぐ入れる」は別の話です。市域が広い藤沢では、希望する年齢や園によって状況がかなり変わります。
未就学のお子さんがいる家庭は、物件の契約より先に、通える範囲の園と市の入所案内を確認しておくと安心です。家を決めてから保育園を探すより、両方を同時に見る。移住ではここが結構大事です。
体調や医療のことで迷ったときには、市の「ふじさわ安心ダイヤル24」(0120-26-0070)で、看護師などの医療スタッフに24時間相談できます。普段は意識しなくても、子どもの急な発熱のような場面で、こういう窓口があると助かります。
湘南の子育て環境の比較は茅ヶ崎・藤沢・辻堂の子育て環境比較でも整理しています。
通勤|東京・横浜へ乗り換えなし。ただし毎日となると別
藤沢駅から東京駅までは東海道線の普通列車で約50分、横浜駅までは20分ほど。平日の朝夕には全席指定の特急「湘南」も停まり、朝の特急湘南2号なら藤沢6:38発で東京7:18着、40分で座って行けます。新宿方面へは湘南新宿ラインのほか小田急線も使えるので、ルートの選択肢が多いのも藤沢駅の強みです。
ただ、湘南から東京方面への通勤を考えるときは、所要時間だけで決めない方がいいと私はいつも思っています。電車で50分と、朝の混雑した電車に50分乗るのとでは、体感がまったく違うからです。週1〜2回の出社なら気にならない人でも、週5日になると負担に感じるかもしれません。横浜勤務なら藤沢はかなり選びやすく、東京勤務なら家賃だけでなく通勤時間まで含めて考えた方がいいでしょう。
駅ごとの通勤時間は湘南から東京への通勤時間・ルート比較へ。
災害リスク|海沿いと北部では確認すべきことが違う
藤沢で家を探すなら、海までの距離と一緒にハザードマップも見てください。藤沢市は津波、高潮、洪水、内水、土砂災害などのハザード情報を公開しています。同じ藤沢市でも、鵠沼・片瀬など海側を見る場合と、湘南台など北側を見る場合とでは、確認すべき災害が変わります。
海に近いことは湘南の大きな魅力ですが、「海まで徒歩5分」がメリットだけとは限りません。住む場所として考えるなら、楽しい部分と面倒な部分の両方を見ておいた方が、後悔は少なくなります。
住所ごとのリスクの確認方法は藤沢市ハザードマップ・避難所一覧にまとめています。
結局、藤沢のどこに住むか
| いちばん大事にしたいこと | 合うエリア |
|---|---|
| 通勤と買い物の便利さ。車なしで暮らしたい | 藤沢駅周辺 |
| 新しい街並みと子育て環境 | 辻堂 |
| 横浜方面への通勤と家賃のバランス | 湘南台・市北部 |
| 藤沢駅に近いまま家賃を抑えたい | 善行・藤沢本町 |
| 海を日常にしたい | 鵠沼・片瀬 |
藤沢は、特定のライフスタイルだけに向いた街ではありません。同じ市の中で、かなり違った暮らし方を選べる。それがこの街の強さだと思っています。逆に言えば、「藤沢に住みたい」だけではまだ範囲が広すぎます。藤沢のどこに住みたいのか。そこまで考えて、初めて物件探しが始まります。
なおのひとこと
湘南に20年以上住んでいて感じるのは、藤沢は「ものすごくとがった街」ではないということです。鎌倉ほど観光地ではないし、茅ヶ崎ほど海の街を前面に出してもいない。でも、その普通さが暮らすには強い。海もほしい、便利さもほしい、通勤も捨てられない。そんな少し欲張りな人にとって、藤沢はいまでもかなり現実的な選択肢だと思います。見に来るなら、藤沢駅だけで帰らず、辻堂の北側と南側、湘南台、海沿いの住宅街まで回ってみてください。それだけで印象はかなり変わります。
- SUUMO「小田急江ノ島線(神奈川県)の賃貸家賃相場」/「JR東海道本線(神奈川県)の賃貸家賃相場」(2026年10月10日更新のデータを参照)
- 藤沢市「人口と世帯数」(2026年8月1日現在、PDF)
- 藤沢市「令和8年4月1日時点の待機児童数について」(PDF)
- 神奈川県「県内市町村の健康電話相談一覧」(ふじさわ安心ダイヤル24)
- JR東日本 時刻表「特急湘南2号(平塚→東京)」
※制度・交通・住宅関連の情報は掲載時点のものです。家賃や保育施設の受け入れ状況は時期や条件によって変わります。

