✍️ この記事を書いた人
なお(茅ヶ崎在住20年以上/投資歴30年の個人投資家)。湘南エリアの不動産・暮らしを当事者として見続けてきた立場から書いています。移住相談や物件選びの話も身近にある日常の中から、感じたことをそのまま書きます。
「子どもを海の近くで育てたい」
湘南移住を考える人と話すと、この言葉はかなりの確率で出てくる。分からなくはない。砂浜を走る子ども、夕方の海、空が広い、時間がゆるい。コンクリートだらけの都市部で育てるよりは、自然が近いほうが何かよさそうに見える。
私も、そう思っていた側だ。
でも、実際にここで暮らし始めてしばらく経つと、「海の近く=子育てに向いている」という話は、そこまで単純じゃないな、と感じる場面が増えた。これは湘南批判ではなく、むしろ好きだからこそ気づく話で——移住を考えている人には、きれいごとより、こういう話のほうが役に立つと思っている。
海が近い生活は、たしかに豊かです
最初にちゃんと言っておくと、「よかったな」と感じる瞬間は普通にある。
学校帰りに砂浜に寄る子どもたち。夕方の134号沿いを自転車で並走する親子。公園ではなく、波打ち際で遊ぶ休日。東京にいたころは「イベント」だったものが、ここでは日常の背景に混ざっている。
あと、これは地味だが、個人的にはかなり大きかった。
海の近くにいると、親の精神状態が少し変わる。仕事・家・満員電車だけで回っていると、人間は無意識に詰まっていく。その圧迫感が、湘南に来ると少しずつ抜ける感覚がある。海を見れば全部解決する、というほど単純ではないが、少なくとも呼吸は浅くなりにくい。
子育てって、親の余裕がかなり影響する。だから「親自身が穏やかでいられる環境かどうか」という点では、海の近くで暮らす価値は確かにある、と思う。
ただ、”自然がある=子育てしやすい” ではない
ここは誤解されやすいところだ。
湘南は外から見るとキラキラして見える。インスタで検索すると特にそうで、海・カフェ・サーファー・芝生と、「余裕ある暮らし」が並ぶ。でも、実際に生活するとかなり泥臭い。
⚠️ 移住前に知っておきたいこと
- 夏の観光シーズンは道路が止まる。保育園の送迎ルートですら渋滞する
- 134号沿いは休日になると地元民が避け始めるレベルで動かない日がある
- 塩害は普通にある。自転車が傷む、エアコン室外機の劣化が早い、洗濯物がベタつく
- 木造アパートや古い物件は湿気がキツい。カビとの戦いになる部屋もある
子育ては結局、生活力の勝負になる部分が大きい。「海が近い」という環境的な豊かさだけでは乗り切れないことが、意外と多い。
湘南は “教育熱が低い地域” ではない
これも意外と誤解されている。
「湘南=のびのび教育」というイメージを持つ人は多いが、実際には教育意識が高い家庭も相当多い。特に藤沢・辻堂周辺は都内通勤の高所得世帯が多いこともあって、習い事は普通に激戦だし、中学受験を意識している家庭も珍しくない。
海辺で自由に育てようと思って来たのに、気づくと塾の送迎をしている、というのはわりとある話だと思う。もちろんそれが悪いわけではない。ただ、「のんびり子育て」だけをイメージして来ると、現実との間にギャップが生まれる可能性はある。
「湘南らしい子育て」が合う人、合わない人
これはかなり相性がある、と感じる。
湘南の子育ては、いい意味でも悪い意味でも距離感が近い。地域コミュニティは残っているし、顔見知り文化もある。サーフィンやアウトドア系のつながりで家族ぐるみになるケースも多く、そこが居心地いい人にとっては理想的な環境になる。
ただ、都会の「干渉されない感じ」に慣れている人には、少し疲れる側面も出てくるかもしれない。
📍 エリアによって空気はかなり違う
- 鎌倉寄りエリア:観光地的な空気が強く、家賃も高め。文化的な世帯が多い
- 茅ヶ崎:湘南らしさとゆるさが同居。移住者コミュニティが活発
- 辻堂・藤沢:利便性が高く、都内通勤世帯も多い。教育意識も相対的に高め
- 平塚以西:生活コストが下がる分、”観光地の湘南”感は薄れる
同じ「湘南」でまとめると結構ズレる。エリア選びは、ライフスタイルの相性と切り離せない。
結局、「どこで育てるか」より「親がどう暮らしているか」かもしれない
🌊 なおの視点
最近強く感じるのは、「子どもが海の近くで育つ」ことより、「親がその土地で無理なく暮らせているか」のほうがよほど重要だということだ。通勤に2時間かけて消耗しきっていたら、海が近くても余裕は生まれない。逆に、多少便利さが犠牲になっても、親のストレスが減るなら、その影響は確実に子どもにも出る。
湘南移住の話って、表面上は「どこに家を借りるか」「物件をどう選ぶか」という話に見える。でも実際は「自分はどんな生活テンポで生きたいか」の話だと思う。海が好きかどうかだけじゃない——人混み耐性、湿気耐性、車移動への慣れ、夏の騒がしさを受け入れられるか。その土地の”ノイズ”を許容できるかが、子育て期間という長期戦では意外と効いてくる。
最後に——「理想の風景」ではなく「その土地の日常」を引き受けること
海の近くで育てたい。その感覚自体は、たぶん間違っていない。
実際、湘南には東京にはない空気がある。夕方に海へ行ける生活は、何年経ってもやっぱり少し特別だ。ただ、移住とは「理想の風景を買う」ことではなくて、「その土地の日常を引き受ける」ことでもある。潮風も、渋滞も、湿気も、夏の混雑も含めて暮らしになる。
そのうえで「それでもこの場所で子育てしたい」と思えるなら、湘南は間違いなくいい選択肢だと思う。正直なところ、私はそれで20年以上居続けているわけだから。
※本記事の内容は執筆時点(2026年5月)における個人の見解・生活実感に基づくものです。教育環境・生活コスト等は今後変化する可能性があります。不動産の取得・移住判断は必ず専門家にご相談ください。

