辻堂・藤沢・茅ヶ崎・平塚……湘南の各駅前にタワーマンションが立ち並ぶ光景は、ここ数年でずいぶん当たり前になった。
「立地の良さ」と「資産性」を理由に購入を検討する方は多い。一方で、タワマン特有の「出口問題」——修繕・建て替え・売却時の課題——は、購入前にしっかり整理しておきたいテーマでもある。
2026年4月には区分所有法の大規模改正が施行された。この改正で何が変わり、何が変わっていないのかを、実データをもとに整理する。
タワーマンションの建て替えはなぜ難しいのか
国土交通省のマンション建替え実績によると、2025年3月末時点の全国累計建て替え実績は323件(要出典確認:国交省「マンション建替え実績」)。このなかに超高層タワーマンションの事例は、国交省資料や各種報道の範囲では確認されていない。
【構造的に難しい理由:5つの要因】
① 建て替え決議には区分所有者の5分の4以上の賛成が必要(旧法)
② 投資目的・区分所有者の多様化で管理組合の合意形成が困難になりやすい
③ 容積率をすでに上限まで使用しているため、戸数増による費用捻出ができない
④ 大規模修繕費は板状マンションの2倍程度とされ(推測ですが)、建て替えコストも高額になりやすい
⑤ 住民の高齢化に伴う合意形成・資金調達の難易度上昇
特に③の容積率問題は、通常マンションの建て替えで活用される「戸数増→新規分譲で費用を捻出」という方式が成立しないという点で、構造的な制約とされている。
2026年4月の区分所有法改正:何が変わったか
約20年ぶりの大規模改正となる「区分所有法改正」が2024年国会で成立し、2026年4月1日に施行された(最新情報要確認)。改正の主な内容は以下の3点だ。
【改正のポイント3つ】
✅ 建て替え決議要件の緩和:耐震性不足等の除却認定取得時、5分の4→4分の3へ引き下げ
✅ 一括売却・解体・大規模リノベの多数決化:従来は全員同意が必要だった手続きが多数決で可能に
✅ 裁判所による管理人選任制度の創設:管理不全マンションに第三者管理人を選任できる
「建て替えか放置か」という二択だった選択肢に、「売却・解体・大規模リノベ」が多数決で動かせるルートが加わった点は、実務的に意義が大きい。
法改正で解決されなかった課題
⚠️ 改正が触れていない課題
・容積率の上限問題(デベロッパーが参入しにくい構造)は法改正の対象外
・要件が緩和されたとはいえ、数百〜千戸規模での合意形成の実行可能性は別問題
・仮住まい・資金調達・権利調整など、実行フェーズのコストは区分所有者が負担
・「制度の整備」と「実際に動かせるか」は必ずしも一致しない
法改正は選択肢を広げた。ただ選択肢が増えたことと、実際にその選択肢を行使できるかは別の話だ。
湘南エリアでタワマンを検討するときに見ておきたいこと
辻堂・藤沢・茅ヶ崎など駅前立地のタワマンは、交通利便性・眺望・設備面で一定の需要がある。購入を検討する際には、以下の点を事前に確認しておくと判断の材料になる。
① 修繕積立金の現在の積立状況と長期修繕計画の内容
② 管理組合の総会出席率と理事会の稼働状況
③ 投資目的・区分所有者の多様性(合意形成の難易度に影響)
④ 築年数と過去の大規模修繕の実施履歴
⑤ 将来の管理費・修繕積立金の値上げ見通し
「今の需要がある」ことと「20年後も資産価値が維持できるか」は、異なる問いだ。不動産は出口を考えてから入口を検討するというのが、個人投資家として30年間持ち続けてきた判断軸のひとつである。
実際、湘南エリアでも築20年前後のマンションで修繕積立金の値上げ議論が難航するケースは、珍しくないと聞く。今まさに購入を検討しているエリアの管理組合の動きを調べてみるのも、ひとつの手だろう。
※本記事は情報提供を目的としており、投資・購入判断を推奨するものではありません。個別物件の判断は不動産専門家にご相談ください。
※法改正の内容は2026年5月時点の情報をもとに整理しています。正確な内容は国土交通省・法務省の公式情報をご確認ください。
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