辻堂は「遊びに行く湘南」ではなく「暮らす湘南」なのかもしれない

住みやすさ・評価

辻堂が「本当に住みやすい街大賞」で1位になったと聞いたとき、湘南にあまり馴染みのない人は少し意外に感じたかもしれない。

湘南と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、江の島や鎌倉、あるいは茅ヶ崎あたりだと思う。辻堂には、これといった大きな観光名所があるわけではない。駅前で観光客が記念写真を撮っているわけでもないし、休日になると全国から人が押し寄せる街というわけでもない。

でも、たぶんそこが辻堂のいいところなんだと思う。辻堂は「遊びに来る湘南」ではなく、「普通に暮らせる湘南」なのだ。

観光地じゃないのに、なぜ「住みやすい」と言われるのか

駅を降りて北口へ出ると、目の前にはテラスモール湘南がある。買い物をして、映画を観て、食事をして、スーパーで夕飯を買って帰る。駅前だけでかなりのことが済んでしまう。

ここだけを見ると、ずいぶん都会的になったなと思う。ところが南口へ出て海の方向へ歩いていくと、空気が変わる。低い住宅が並び、自転車で走る人がいて、サーフボードを積んだ車を見かける。そのまま進めば辻堂海浜公園、さらに国道134号を越えれば海だ。

ショッピングモールのある駅から、それほど離れていないところに海がある。この距離感が、辻堂の面白いところだと私は思っている。

駅前で全部済んでしまう便利さ

2011年11月に開業したテラスモール湘南は、2026年で開業15周年を迎える。今ではすっかり辻堂の日常に溶け込んだ存在で、休日に限らず平日の仕事帰りに立ち寄る人も多い施設だ。

わざわざ「今日は湘南へ行こう」と予定を立てなくてもいい。朝、少し早く起きて海まで行く。犬を散歩させる。自転車で134号を走る。夕方、海を見てからスーパーへ寄って帰る。そんなふうに、湘南がイベントではなく日常になっているのが辻堂だと感じている。

南口へ出ると、空気が変わる ― 辻堂海浜公園とその先の海

辻堂海浜公園は約19.9ヘクタール。芝生広場や交通公園、夏のジャンボプールなどがあり、その先には湘南海岸が広がっている。バリアフリーモデル公園としても整備されていて、年間を通して幅広い年齢層に利用されている場所だ。

■ 辻堂がランキング1位になったときの評価基準

住宅ローン専門金融機関ARUHIが発表した「ARUHI presents 本当に住みやすい街大賞2022」(1都3県対象)で、辻堂は総合評価4.24点で1位を獲得した。評価基準は「住環境」「交通の利便性」「教育・文化環境」「コストパフォーマンス」「発展性」の5項目で、実際にその街で暮らす利用者データをもとに算出されている点が特徴だ(2021年の同ランキングでは3位)。

この距離感が、辻堂の面白いところだと思う。ショッピングモールのある駅から、それほど離れていないところに海がある。わざわざ予定を立てなくても、湘南が日常の中にある。

新しい辻堂と、昔からの辻堂が混ざっている

辻堂には鎌倉のような歴史的な街並みはない。江の島ほど観光地でもない。茅ヶ崎ほど「湘南」という物語を前面に押し出している感じもしない。むしろ、少し地味だ。でも長く暮らすなら、その地味さが妙に心地いいと感じている。

駅前は便利になったのに、少し離れれば昔からの住宅街が残っている。新しいマンションの隣を、昔からこの街に住んでいる人が自転車で走っている。大型商業施設ができても、街全体まで大型商業施設になったわけではない。新しい辻堂と、昔の辻堂がまだ混ざっている。それもこの街の魅力だと思う。

■ 住む前に知っておきたいこと

もちろん、いいことばかりではない。休日のテラスモール周辺は混みやすく、国道134号も渋滞することがある。海に近いエリアは塩害の影響も出やすく、夏は海沿いに人も車も増える。「湘南暮らし」という言葉だけを見て移住すると、思っていたのと違う部分が出てくることもあると思っておいたほうがいい。

「住みやすい」の中身は、ランキングだけでは分からない

それでも辻堂が支持される理由は、欠点がないからではないと思う。都会の便利さを捨てなくても、海のある暮らしができる。ここが大きい。東京へ通勤する生活もできるし、駅前でほとんどの買い物が済む。病院もあるし、子どもを連れて遊べる大きな公園もある。そして少し自転車を走らせれば海がある。

ただ、実際の魅力は数字ではなかなか説明しにくいものだとも思う。夕方、辻堂海浜公園から海へ向かうときの風。冬の晴れた日に海岸から見える富士山。夏の夕方、海から帰ってくる自転車。駅前では仕事帰りの人が買い物をしている。そんな普通の風景の中に、湘南らしさが混ざっている。

なおのひとこと

辻堂の魅力は、たぶん「何かがあること」ではなく、都会と海の間にちょうどいい余白があることなんだと思う。住みたい街ランキングは毎年変わるし、順位もそのうちまた変わるだろう。でも街の価値は、ランキングが決めるものでもない。朝起きてカーテンを開けて、今日は天気がいいから海まで行こうかな、と思える。それが特別な休日ではなく、普通の火曜日だったりする。辻堂が「住みやすい」と言われる理由は、案外そんなところにあるのかもしれない。湘南に住んでいることを見せる街ではなく、湘南で普通に暮らせる街。その普通さが、実はいちばん贅沢なのだと、20年以上茅ヶ崎に住んでいる私は感じている。

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【出典・参考】
・ARUHI presents「本当に住みやすい街大賞2022」/BCN+R「かしこく暮らす21年実績・1都3県『本当に住みやすい街大賞2022』1位は辻堂」(https://www.bcnretail.com/topics_detail9/20220104_258385.html
・神奈川県「辻堂海浜公園・湘南汐見台公園 管理運営業務の内容及び基準」(公園面積約19.9ha、令和2年4月1日時点)(https://www.pref.kanagawa.jp/documents/70409/01_bosyu_08.pdf
・住友商事株式会社 ニュースリリース(テラスモール湘南2011年11月開業)(https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/release/2018/group/20180117

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