この記事を書いた人 なお@HAVE MARCY|湘南地区在住20年以上。東京から移り住み、海沿いと内陸の両方の冬を過ごしてきました。
「湘南って、冬も暖かいんですよね?」
移住を考えている人と話すと、かなりの確率でこう聞かれます。海があって、ヤシの木が並んでいて、冬でもサーファーが海に入っている。そういう景色を見れば、南国っぽい冬を想像するのは自然なことだと思います。
20年以上ここで冬を越してきた私の答えは、「半分ホント、半分は思い込み」です。
数字で見ると、湘南の冬は東京とそれほど変わりません。それでも「過ごしやすい」と感じる日は確かに多い。一方で、移住してから「思ったより寒い」と驚く人がいるのも事実です。この記事では、気象庁のデータと、自分が冬を過ごしてきた体感の両方から、湘南の冬の実際を書いてみます。
データで見ると、東京との差は「1℃もない」
まず数字から確認します。湘南の海沿いにある気象庁のアメダス観測点「辻堂」と、都心の「東京」の平年値(1991〜2020年の30年平均)を並べると、こうなります。
| 項目(平年値) | 辻堂(湘南) | 東京(都心) | 差 |
|---|---|---|---|
| 1月の平均気温 | 6.0℃ | 5.4℃ | +0.6℃ |
| 1月の最高気温 | 10.8℃ | 9.8℃ | +1.0℃ |
| 1月の最低気温 | 1.5℃ | 1.2℃ | +0.3℃ |
| 1月の日照時間 | 202.5時間 | 192.6時間 | +約10時間 |
| 年間の日照時間 | 2,096.9時間 | 1,926.7時間 | +約170時間 |
※気象庁の平年値(1991〜2020年)をもとに作成。アメダス観測点の日照時間は、2021年以降は推計値をもとに補正された値です。
1月の平均気温の差は0.6℃。いちばん冷える明け方の最低気温に至っては0.3℃しか違いません。「湘南は南国」というイメージで来ると、ここでまず肩すかしを食らいます。
ただ、表の下の2行を見てください。日照時間は1月だけで約10時間、年間では約170時間、辻堂のほうが長い。私が「半分ホント」と言っているのは、まさにこの部分です。
それでも「暖かい」と感じる理由は、気温より日差し
湘南の冬の昼間は、とにかく晴れる日が多い印象です。風のない晴れた日の午後、海沿いを歩いていると、上着を脱ぎたくなることがあります。気温は10℃前後でも、日差しが強いと体感はまったく違います。
冬の朝、空気が澄んだ日には、海の向こうに富士山がくっきり見えます。茅ヶ崎の海岸や江の島の方から見る冬の富士山は、20年経っても見るたびに足が止まります。これは数字には出てこない、湘南の冬のいちばんの贅沢だと思っています。
雪についても、都心と比べて「積もって困る」場面は少ない印象です。ただし、南岸低気圧が通るときには湘南でも雪が積もる年があります。数年に一度のこととはいえ、坂の多いエリアや車通勤の人は、スタッドレスまでは要らなくても、雪の日は無理に動かない判断が必要です。
湘南の冬が「思ったより寒い」3つの正体
では、移住した人が「寒い」と感じるのはなぜか。私が見てきた範囲では、原因はだいたい次の3つに集約されます。
① 風。海沿いは遮るものがない
湘南の冬の寒さは、気温より風です。冬は北寄りや西寄りの強い風が吹く日があり、海沿いの国道134号線あたりは建物が少ないぶん、風をまともに受けます。同じ5℃でも、風速が数メートル違えば体感はまるで別物です。
特に自転車移動の人は覚悟しておいたほうがいいです。海沿いを向かい風で走る冬の夕方は、正直つらい。夏の湘南を自転車で走るイメージしか持っていないと、冬に心が折れます。
② 家の寒さ。古い戸建ては外より寒い日がある
湘南は、昔ながらの木造の戸建てや、築年数の古い賃貸がまだ多い地域です。「冬は暖かい地域だから」という前提で建てられたのか、断熱がそれほど強くない家に当たることがあります。
日中は日差しで暖かくても、日が落ちると一気に室温が下がる。外の気温差は東京とわずかでも、家の性能の差で体感が逆転することは普通にあります。「湘南の冬が寒い」という声のかなりの部分は、気候ではなく住まいの問題だと私は感じています。
③ 海沿いと内陸で、同じ「湘南」でも違う
今回のデータは海沿いの辻堂の値です。湘南台や藤沢北部、茅ヶ崎の北側など、海から離れた内陸のエリアは、朝の冷え込みが海沿いより強いと感じる日があります。逆に、内陸は海風が弱いぶん、風の冷たさは和らぎます。
「湘南」とひとくくりにせず、住むエリアが海から何キロ離れているかで、冬の過ごし方は変わる。これは物件選びのときに意外と見落とされるポイントです。
冬は塩害にも気をつけたい
塩害は夏のイメージが強いですが、冬の強風の日にも海からの塩分は飛んできます。海沿いに住むなら、車や自転車、エアコンの室外機は季節を問わずこまめなケアが必要です。詳しくは湘南の海沿い賃貸の塩害の記事にまとめています。
冬に内見するなら、ここを見てほしい
以前、春に湘南を内見するときの落とし穴について書きました。春は景色が良すぎて判断が甘くなる。逆に冬は、その家の弱点がいちばん出やすい季節です。この時期に内見できるなら、むしろチャンスだと思います。
日当たりは「冬の午後」に確認する。冬は太陽の位置が低いので、夏に日が入る部屋でも、隣の建物の影に入ってしまうことがあります。湘南の冬の暖かさは日差しに支えられているので、日が入らない部屋は想像以上に寒くなります。
窓まわりの結露とカビの跡を見る。海が近いと湿気も多い地域です。窓枠やサッシの下に黒い跡があれば、冬の結露が多い家だと考えていいと思います。
風の通り道を体で感じる。内見の日に風が強ければ、建物の外を少し歩いてみてください。玄関やベランダが海側に向いていて、風をまともに受ける造りかどうかは、図面より現地のほうがずっとよく分かります。
なおのひとこと
私は湘南の冬がいちばん好きです。夏の混雑が嘘のように海は静かで、晴れた朝には富士山が見える。風の強い日は家にこもればいいし、風のない日は最高の散歩日和になる。「暖かいから」ではなく「冬の湘南の空気が好きだから」住んでいる、というのが正直なところかもしれません。
まとめ:暖かさを期待するより、晴れの多さを楽しむ
湘南の冬は、気温だけ見れば東京とほとんど変わりません。1月の平均気温の差は1℃にも届かない。「冬も暖かい南国」を期待して移住すると、少しがっかりするかもしれません。
その代わり、晴れの日と日差しは確かに多い。寒さの原因の多くは、風と家の性能です。だからこそ、住むエリアが海からどれくらい離れているか、家の断熱と日当たりがどうか。この2つさえ押さえておけば、湘南の冬はかなり快適に過ごせると思います。
移住を考えている人は、ぜひ一度、風の強い冬の日に湘南を歩いてみてください。夏とはまったく違う、この街のもう一つの顔が見えるはずです。
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出典・参考資料
- 気象庁「過去の気象データ検索」(平年値 1991〜2020年)
- 辻堂アメダスの月別平年値(気象庁公開データを加工)
- 東京の月別平年値(気象庁公開データを加工)
※気温・日照時間は30年平均の平年値です。年ごとの実際の天候は平年値と異なります。体感に関する記述は筆者個人の経験にもとづきます。
